2012年3月31日土曜日

Q&A よくあるご質問:法律事務所シリウス


借金の問題

 私は、消費者金融等で借り入れた借金の返済ができずに困っておりますが、そういった借金の問題を解決するのにどういった方法があるのでしょうか。一般的な方法とその手続きを教えてください。

現在、借金の問題で困っている方が多数存在し、社会問題化しているところです。

当事務所においては、個人の債務者については「任意整理」、「個人再生手続」、「破産手続」によって負債の問題を解決しています。
手続はおおむね以下のようなものです。

 貸金業者等からこれまでの取引履歴を提出させます。

 さらに、 で取り寄せた取引履歴を前提に、業者が現在適用している利息(25%〜29%)ではなく、利息制限法所定の利息(15%〜20%)に引き直して計算した額によって「正確な負債総額を把握」します。

具体的には、これまで利息として支払ってきた額のうち、利息制限法所定の利率を超える金額については、元金に充当する形で再計算を行いますので、負債総額が減ることが多くあります。

平成19年1月1日に、100万円を年29.2%で借入をし、毎月1日3万円滞りなく支払いを行った場合

 正確な負債を把握する作業を行った後に方針を決めることになりますが、おおむね以下のような解決方法があります。


、 過払金が発生して負債が無くなる

過払金(上記、の作業を行った結果、払いすぎであった場合に業者から返還を受けることができる金額のことです。)が発生し、業者から取り戻せる場合もあります。
長年、貸金業者と取引を行っている方の場合は、負債がなくなってしまう場合もあり得ますが、一部の業者には払いすぎで、過払金が戻ってくるが、他の業者には残債務が残ってしまう場合には、以降の手続の検討を行います。

任意整理

負債が残ってしまい(過払金が一部発生しても残債務が発生してしまう方もいます。)、定期的な収入があり、無理ない返済プランが立てられる場合には、債権者と話し会い、分割弁済を行うことを合意し、数年間(おおむね、3年程度)での弁済を目指します。

任意整理による場合、業者とは将来利息の免除の交渉を行い、相手方が了解した場合には、元金のみの分割弁済となります。
また、定期的な収入ではなく、不動産等の資産を売却して一括返済ということも考えられるところです。任意整理は、各依頼者の経済的状況によって柔軟な対応が可能な手続といえます。

、 個人再生手続の利用

定期的な収入はあるが、毎月の収入では、任意整理を行うことが難しい場合に、裁判所に個人再生手続の申立てを行い、負債の一部カットを行った上で、原則として3年間の分割弁済を行い、残額を免除してもらいます。

個人再生手続は、定期的な収入(給料である必要はなく自営・農業等の不定期な収入でも手続の利用ができます。)のある方が利用できる小規模個人再生と給与所得者等が利用できる給与所得者等再生手続がありますが、この二つの手続は、最低弁済額や手続を進める上で債権者の同意が必要か否かといった点に違いがあります。

なお、個人再生手続において、裁判所の許可を得た上で住宅ローンの弁済は継続したまま、他の負債の一部カットを行うこともできますので、住宅を維持したい方には便利な手続と言えます(住宅資金貸付債権に関する特則を利用した個人再生手続)。

どのくらいのカットができるかというと、小規模個人再生手続の場合には、1500万円以下の負債額の場合、負債額の5分の1と、100万円のいずれか大きい額ということが一つの基準となります(例えば、400万円の負債額であれば、5分の1が、80万円となり、100万円のほうが額が多いですから、100万円を3年間で分割弁済することになります。)。給与所得者等再生手続の場合は、法令等で定められた方式によって算出された可処分所得の2年間分の額を支払うことになります。

なお、上記の計算により最低弁済額が算出されますが、その額以上の財産を持っている場合には、その財産の価額が最低弁済額になります(清算価値保障原則といいます。)。

、 破産手続

裁判所に破産・免責手続の申立てを行います。
収入がない方や、親族の事業資金の連帯保証をした場合で、負債額が多額のため、任意整理や個人再生手続では解決できない場合は破産手続を利用し、負債のない新たな生活を行うことが望ましいと思われます。

例えば、自営業者の知り合いが銀行から2000万円借り入れた際に、頼まれて連帯保証人になってしまったが、自分の収入がパート収入で毎月8万円程度しかなく資産等もない場合などは、破産手続を利用することが考えられますし、負債が200万円しかない場合でも、うつ病のために職を失い、現在生活保護を受給することを検討中といった場合も、破産手続による解決しか図れないことが多いと思われます。

なお、裁判所において、免責決定を受けることができれば、法律上負債の支払義務がなくなります。

 

 

任意整理とはどんなことをするのですか。

任意整理とは、貸金業者等からこれまでの取引履歴を提出させ、業者が現在適用している利息(25%〜29%)ではなく、利息制限法所定の利息(15%〜20%)に引き直して計算した額によって「正確な負債総額を把握」します。

具体的には、これまで利息として支払ってきた額のうち、利息制限法所定の利率を超える金額については、元金に充当する形で再計算を行いますので、負債総額が減ることが多くあります。

その「正確な負債総額」を前提として、3年程度の期間で、将来利息を免除してもらい、分割弁済を行う合意を目指す手続です。
ある程度の収入がある人、収入の範囲内で分割弁済が無理なくできる方にむいている手続です。

なお、改正賃金業法が施行される 2009年12月 以降の貸金業者の貸付については、出資法の定める貸金業者の貸付上限金利を利息制限法所定の利率まで引き下げることになっており、利息制限法所定の利率と貸金業者の貸付金の利率のギャップ(グレーゾーン金利)は存在しなくなります。

 

 

負債を整理する方法として個人再生手続というがあると聞きましたが、どのような手続きですか。

個人再生手続とは、定期的な収入はあるが、毎月の収入では、各債権者に対する弁済を行うことが難しい債務者が、負債の一部カットを行った上で、原則として3年間の分割弁済を行い、残額を免除してもらう手続をいいます。
個人再生手続には、定期的な収入のある方が利用できる小規模個人再生と給与所得者が利用できる給与所得者等再生手続がありますが、最低弁済額の算出方法や債権者の同意の有無等について違いがあります。

なお、個人再生手続において、裁判所の許可を得た上で住宅ローンの弁済は継続したまま、他の負債の一部カットを行うこともできますので、住宅を維持したい方には便利な手続と言えます(住宅資金貸付債権に関する特則を利用した個人再生手続)。

どのくらいのカットができるかというと、小規模個人再生手続の場合には、1500万円以下の負債額の場合、負債額の5分の1と、100万円のいずれか大きい額ということが一つの基準となります(例えば、400万円の負債額であれば、5分の1が、80万円となり、100万円のほうが額が多いですから、100万円を3年間で分割弁済することになります。)。

給与所得者等再生手続の場合は、法令等で定められた方式によって算出された可処分所得の2年間分の額を支払うことになります。
上記の計算により最低弁済額が算出されますが、その額以上の財産を持っている場合には、その財産の価額が最低弁済額になります(清算価値保障原則といいます。)。

また、小規模個人再生手続においては、過半数の債権者が再生計画案に反対しないことが要件となります。

 

 

破産手続のメリット、デメリットを教えてください。

破産手続のメリットは、免責決定を受けることができれば、法的に負債の支払義務がなくなりますので、破産手続開始決定後の収入は全て自分のために使うことができ、経済的なリスタートを切ることが容易だということです。
  デメリットとしては、信用情報機関に、負債を支払えなかったというマイナスの情報が登録されますから(信用情報機関によって、年数は異なりますので、詳細は、各種信用情報機関のホームページ等をご参照下さい。)、当面、金融機関等からローンを組むことは難しいですし、クレジットカードの審査もパスしません。

また、破産手続開始決定までに形成した資産(不動産、20万円を超えるような金融資産)は、本来的には債権者への支払いにあてられる資産となりますので、原則として保持できません(但し、特定の事情がある場合には、自由財産の範囲の拡張等の方法で一定限度の財産の保持は認められることがあります。)。
なお、たまに質問されることがあるのですが、破産していることは、住民票や戸籍には記載されませんし、選挙権が制限されるということはありません。

 

 

私は、48歳の男性で会社員ですが、給料が減ってしまい、住宅ローンや子供の教育費が支払えないので5年前ほどからいわゆる消費者金融5社から借り入れを行い、現在はその負債額が300万円ほどあり、返済ができずに他者から借り入れる状況です。
破産するしかないのでしょうか。

収入

手取34万円ボーナス
夏冬各40万円ずつ

負債

住宅ローン2000万円
毎月の返済額は11万円、ボーナス時30万円
消費者金融5社 300万円
毎月の返済額合計は、5社で12万円

生活費

子供二人の教育費・食費等で、毎月12万円前後

任意整理もしくは住宅資金貸付債権に関する特則を利用した個人再生手続の申立を行うことが考えられます。

あなたの場合、毎月の収入が34万円しかないのに、負債の返済と生活費が35万円もあり、毎月赤字ですから、このままでは借入は増える一方です。

収入の部 支出の部
給料 34万円 住宅ローン  11万円
その他負債  12万円
生活費 12万円
合計 34万円 合計 35万円

収支 ⇒ 毎月1万円の赤字

しかし、収入から住宅ローンと生活費を差し引いた11万円のうち、一定額を返済にまわす形にできれば毎月の収支を改善できると思います。

収入の部 支出の部
給料 34万円 住宅ローン  11万円
その他負債   3万円
生活費 12万円
合計 34万円 合計 26万円

借入時期が5年前ということですが、利息制限法所定の利息による再計算を行うことで消費者金融に対する負債総額が減る可能性もあり、現在は、300万円ある負債が100万円程度まで減れば、住宅ローン以外の債務を36回程度の分割で弁済することにしても毎月の返済額は約3万円です。

住宅ローンの11万円に加えて、消費者金融へ3万円の弁済となれば、計算上は毎月8万円程度の貯金ができることになりますので、子供の成長に必要な資金やいざという時のために貯金額を増やすことも可能になります。

また、消費者金融に対する負債総額が200万円以上残り、その額を3年で返済するとしたら、毎月の返済額が6万円程度になってしまいます。

そのような場合には、住宅ローン以外の負債の一部カットするために「住宅資金貸付債権に関する特則」を利用した「小規模個人再生手続」や「給与所得者等個人再生手続」の申立を行うことで住宅を維持しつつ、その他の負債額を減らすことも可能です。

交通事故の問題

交通事故を起こした場合、加害者にはどんな責任がありますか。

交通事故の加害者は、一般に次の3つの責任を問われます。

刑事責任

法律に違反したことに対して、国から刑罰を科されるという意味での責任です。不注意によって交通事故を起こし、被害者に傷害を負わせた場合には、業務上過失傷害等の罪に問われ、罰金刑・懲役刑等の刑罰が科されます。

民事責任

交通事故によって被害者に与えた損害を弁償しなければならないという意味での責任です。被害者の損害には、大きく分けると人的損害(怪我の治療費、慰謝料等)と物的損害(相手自動車の修理代等)があり、加害者は過失割合に応じてこれを弁償しなければなりません。

行政責任

公安委員会から運転免許の停止・取消等の処分がなされるという意味での責任です。その他、公務員の方が加害者となった場合に、懲戒解雇や減俸等の処分がなされることもこの行政責任の一つです。

 

 

脇見運転をして、道路脇を歩行中の人に自動車を衝突させてしまいました。被害者は右手を負傷したようです。現場では何をしなければなりませんか。

まず、自車を道路脇など安全な場所に停止させ、被害者の傷害の部位・程度等を聞き、応急措置や救急車を呼ぶなど必要な救護活動をします。それから警察に通報し(110番通報)、警察官が到着したら実況見分等の手続に立ち会い、事故状況などを説明します。

なお、この他に、続発事故を防止するため、交通の危険を生じさせている破損部品を道路脇に寄せたり、付近の交通整理をするなど、現場での危険防止措置をとる必要があります。

現場での活動が一段落したら、自分が加入している任意保険会社に事故発生の連絡をして下さい。

 

 

交通事故の被害者としては現場で何を注意すべきですか。


どこにお金を保存することができます

あなたの怪我が軽傷で、移動や会話ができる場合には、主に次の点に注意して下さい。

 加害者が「警察は呼ばないで下さい。十分な弁償をさせて頂きますから。」と頼んできた場合でも、警察への事故報告(110番通報して警察官を現場に呼び、事故状況等を報告すること)は必ずして下さい。人身事故はもちろん、物損事故でも事故報告の義務があり、この義務は被害者の側にもあるとされています(道路交通法72条1項)。
この事故報告を行わないと、理論的には被害者といえど罰則(懲役刑や罰金刑)の適用が可能になりますし、後日加害者が言を翻して弁償をしない場合に、相手方の任意保険会社からの弁償が受けられなくなるなどの不利益もあります。

 加害者から、その住所・氏名・連絡先電話番号を聞き、必ずメモを取っておいて下さい。また、加害者加入の自賠責保険会社・任意保険会社の会社名・連絡先も聞いておくとよいでしょう。

 

 

交通事故の被害に遭い、右手骨折等の傷害を負い、現在通院中です。病院の治療費や休業損害など当面必要なお金は、相手方の任意保険会社が支払ってくれています。今後、慰謝料などの損害賠償はどのように請求することになりますか。

交通事故の慰謝料は、通常、傷害が治癒したか、又は症状が固定した場合(簡単に言うと「それ以上治らない」と判断された場合)に、その他の損害賠償金とあわせて、まとめて請求します(最終的な損害賠償額の示談交渉)。

[傷害が治癒した場合]

この場合、慰謝料の金額は入通院期間の長さや怪我の内容・程度などを基準として定められます。通常は、治療終了後、保険会社担当者から最終的な損害賠償額の提案があり、その提案に納得すれば示談書にサインして賠償金の支払いを受けます。保険会社の提案に納得がいかない場合は、納得がいかない理由を担当者に説明するなどして適正な賠償を得られるよう交渉します。自分自身での交渉が行き詰まった場合は、交通事故紛争処理センターや裁判所の調停を活用するなどの手段を検討します。詳しくは、弁護士等に一度相談されると良いでしょう。

[後遺障害があると思われる場合]

この場合、まず後遺障害の有無・程度を認定してもらう必要があります。後遺障害認定には、主に次の2種類の手続があります。

 相手方任意保険会社を通じて後遺障害の有無・程度を認定してもらう方法(いわゆる「事前認定」)
被害者にとって手続の負担が少ないことから、通常はこちらの方法をとることが多いでしょう。被害者としては、治療担当医師に後遺障害診断書を書いてもらい、それを任意保険会社に提出します。すると、任意保険会社は、病院から取り寄せた被害者のレントゲン写真などの医療記録がある場合はそれらの資料とともに、後遺障害診断書を損害保険料率算出機構(自賠責保険の損害調査を担当する組織で、後遺障害の認定も行います。)に送付します。その後、算出機構が被害者の後遺障害の有無・程度を評価した結果を書面で任意保険会社に回答し、被害者は任意保険会社を通じてその回答結果を入手します。その回答は、「後遺障害等級認定票」と呼ばれ、結論(後遺障害が○○級であること)と理由(○○という障害が診断書や� �ントゲン写真などから認められること)が書かれています。
任意保険会社は、その認定票を元に、損害賠償額の提案をしてきます。その提案を受け入れるか、さらに交渉を続けるかなど、その後の処理は[傷害が治癒した場合]と同様です。
なお、後遺障害があると思われる事案では、傷害が治癒した場合と比較して、より慎重な対応が必要です。認定された後遺障害の内容・程度に不服がある場合には、異議申し立てを行うことができます。後遺障害の内容・程度が異なると損害賠償額も大きく異なってきます。異議申し立てを行う場合、追加の資料(担当医師の追加意見書等)を準備するなど事案に応じた適切な対応が必要になりますので、弁護士等に相談することをおすすめします。

 自ら自賠責保険に保険金を請求する方法(いわゆる「被害者請求」)
自ら自賠責保険に保険金を請求することによって、同時に後遺障害認定を受ける方法もあります。「事前認定」の方法による場合、被害者は任意保険会社から医療記録開示等の同意書にサインすることを求められます。その同意書があると、保険会社は被害者のカルテや看護記録などの医療記録を取り寄せることも可能になります。医療記録の中には高度のプライバシーに属する情報が含まれていることもあり、同意書を書きたくないという方もいらっしゃいます。その場合は被害者請求をすることになります。
被害者請求の事案では、後遺障害の認定を受けた上で、後遺障害等級に応じた自賠責保険金が支払われます。その上で、自賠責保険ではまかなわれなかった他の損害について、再度任意保険会社に請求し、交渉することになります。

 

 

怪我の治療も終わり、保険会社から最終的な賠償金の支払額について提案がありました。その金額が本当に妥当かどうか、何か基準のようなものがありますか。

交通事故の損害賠償金を算定するにあたっては、様々な基準が用いられています。自賠責保険の保険金額の算定基準、任意保険会社が賠償額を提示する場合の算定基準、裁判で賠償額が決められる場合の算定基準など、それぞれ違った基準で算定されています。

慰謝料について少し具体例を挙げて説明します。なお、「基準」といっても、あくまで目安とされるにすぎず、具体的事情に応じて、金額も増減されます。したがって、必ずしも基準金額の賠償が得られるとは限りませんので、以下の算定例もあくまで参考とお考え下さい。

■慰謝料の算定例

[傷害の内容等]

傷害の内容:頚椎捻挫(いわゆるむち打ち症)
入院期間:なし
通院期間:3ヶ月
実通院日数:30日
後遺障害:なし

[自賠責保険の算定例]

30日×2×4200円=25万2000円
※基準…慰謝料は1日につき4200円。通常、入通院日数の2倍が対象日数となる。
※任意保険の算定基準も上記と同レベルか、多少上回る程度と思われます。

[裁判における算定例]

通院期間3ヶ月の基準金額=53万円

■慰謝料の算定例

[傷害の内容等]

傷害の内容:右大腿骨骨折等
入院期間:2ヶ月(60日)
通院期間:10ヶ月
実通院日数:120日
後遺障害:右股関節の関節機能障害(自賠責保険の後遺障害等級12級)

[自賠責保険の算定例]

1 入通院慰謝料

(入院分)60日×2×4200円=50万4000円
(通院分)120日×2×4200円=100万8000円
(合計)151万2000円

※但し、傷害による損害の支払上限額は120万円なので、実際に支払を受けられるのは、他の損害と合わせて120万円までの範囲にかぎられます。

2 後遺障害慰謝料

後遺障害等級12級の基準金額=93万円

3 慰謝料合計

244万2000円

※但し、実際に支払いを受けられる慰謝料の額は、傷害分120万円(上限額)+後遺障害分93万円の合計213万円となります。

※任意保険の算定基準も上記と同レベルか、多少上回る程度と思われます。

[裁判における算定例]

1 入通院慰謝料

入院2ヶ月、通院10ヶ月の基準金額=149万円

2 後遺障害慰謝料

後遺障害等級12級の基準金額=290万円

3 慰謝料合計

439万円

 

 

加害者にひき逃げされてしまいました。まだ加害者は逮捕されていません。この場合、賠償金を得ることはできないのでしょうか。

ひき逃げ事故に遭い、加害者が不明な場合でも、慰謝料などを受け取ることができる場合があります。加害者不明の交通事故でも政府保障事業という制度を利用して、一定の限度で国から金銭給付を受けることが可能です。また、自分が掛けていた自動車保険(いわゆる任意保険)会社に対して保険金を請求できる場合もあります。

現在の自動車保険は、支払い条件等の内容も複雑で、制度を理解するだけでも大変な負担になると思います。弁護士は、事案に応じてどのような制度が利用可能かアドバイスすることができます。この点でも、早い段階で一度弁護士に相談することをお勧めします。

 

高齢者・障害者の問題

86歳になる私の父は現在自宅で一人暮らしをしていますが、最近通帳や印鑑の置き場所を忘れる、同じことを何度も何度も繰り返すなど認知症と思われる症状が出始めました。また、父の家の近所の人から、最近父の家にセールスマンらしき人が出入りしているという話も聞きました。
父は、年金と所有しているアパートの家賃収入で生活していますが、アパートの管理も全くできていないようです。
   このままですと、セールスマンに騙されて不要な物を買わさせたりしないか心配ですし、アパートの管理や、将来施設に入ることも考えると、今のままでは不安です。父の財産を適切に管理する方法はありますか?

お父さんの様子ですと、認知症により判断能力が低下している可能性があります。このような場合、お父さんに代わって判断する人を家庭裁判所に選任してもらうことができます(成年後見制度)。判断能力の程度により後見人、保佐人、補助人(図T参照)という人が選任されます。

お父さんの状況では、保佐あるいは補助の類型に該当する可能性があります。現在は、改訂長谷川式簡易知能評価スケールという認知レベルの目安を測る検査方法がありますので、早期に医師に相談して認知症の検査を行ってもらうといいでしょう。なお、補助の場合は、申立に際しお父さんの同意が必要になります。

保佐、補助の審判が下りた場合、一定の重要事項については保佐人、補助人に同意権、取消権が与えられますので、お父さんが保佐人、補助人の同意なく高価な物を購入したような場合には保佐人、補助人が売買契約を取り消すことができます。また、アパートの管理ができていないのでしたら、アパートの管理に関する代理権限を付与してもらうといいでしょう(ただし代理権の付与にはお父さんの同意が必要です)。

問題は誰が保佐人、補助人になるかですが、親族間で特に問題がなければ妻や子など親族がなることが多いと思われます。しかし、親族間の対立がある場合など第三者の専門家の関与がふさわしいと裁判所が判断した場合は、弁護士等が選任されることもあります。

後見・保佐・補助は何が違うのですか?

本人の判断能力の低下の程度により使い分けられます。また,成年後見人・保佐人・補助人についてそれぞれの権限の範囲が異なります(「図T」参照)。

成年後見人は子である私がやりたいのですが,選任してもらえるのでしょうか?

成年後見等の申立書には成年後見人等の候補者を記載することができます。成年後見人になりたい場合は候補者欄に自己の名前を記載することになります。
ただし,成年後見人・保佐人・補助人を誰にするかは家庭裁判所の権限ですので,必ずしも希望通りとなるわけではありません。特に親族間で争いがあったり,本人と候補者とで利害関係がある場合など第三者の関与がふさわしいと裁判所が判断した場合は,第三者後見人(弁護士,司法書士,社会福祉士等)が選任されることもあります。

父の遺産分割協議をするため,認知症の母に第三者の成年後見人を選任してもらいました。今般遺産分割協議が終わったので,成年後見人は必要なくなったのですが,母の成年後見制度の利用を取り消してもらうことはできるのでしょうか。

一旦成年後見を申し立てると,本人の能力が回復するか,本人が死亡するまでは成年後見制度の利用自体を止めることはできません。遺産分割協議の解決を目的として申し立てた場合,協議が終われば成年後見制度が不要となると錯覚しがちです。しかし,成年後見制度を利用しなければならない人は,遺産分割協議以外の社会生活においても他者の援助が必要です。ですから,本人の能力が回復しない限り,任意に成年後見制度を取りやめることはできないのです。
ただし,第三者の成年後見人から親族の成年後見人への変更については,家庭裁判所が必要性・相当性があると判断した場合は,変更を認める場合もあります。何らかの事情で親族への成年後見人の変更が必要と思った場合は,家庭裁判所に相談してみてください。

私の兄は最近理解できないようなことを言うようになってしまいました。
どうも何らかの幻覚を見たり妄想を抱いたりしているようです。
また,突然家を飛び出していなくなったり,
帰ってくると部屋に閉じこもり食事を取らなかったりするなどしています。
病院に行こうと言っても聞いてくれません。
そこで保健所に相談したところ,「医療保護入院」という言葉を聞きました。
「医療保護入院」とは一体どういうものなのでしょうか。

お兄さんの状況からすると,統合失調症に罹患している可能性があります。
このように,精神上の障害を有していると疑われる人の問題については,
保健所に相談するとよいでしょう。その点で,保健所に相談したことは賢明だと思います。
お兄さんの状況からして,適切な医療を受けることが望ましいと考えられますが,
どうしてもお兄さんが拒否する場合の方法として,医療保護入院という方法があります。すなわち,精神上の障害により,本来治療が必要であるにもかかわらず,その治療の必要性が理解できない状況があり得ます。
そのような場合に,精神科医の診断が条件ですが,「保護者」の同意により,入院等の措置を取ることができます。このような入院を,「医療保護入院」といいます。成人の場合,保護者は,配偶者ということになりますが,配偶者がいない場合には,その他の親族が家庭裁判所で保護者に選任してもらうことになります。
なお,すでにお兄さんについて統合失調症と診断され,判断能力がないものとしてあなたが「後見人」に選任されているような場合であれば「保護者」としての地位を持つことになりますので,改めて「保護者」の選任を受ける必要はありません。

 

消費者の問題

この前突然「布団の点検に来ました」などと言って業者が家に来て,布団の点検をしました。すると,業者は,「お宅の布団はダニの巣になっています」「このままでは体のあちこちに不快な症状が出て,最後には病気になってしまいます」などと言い,続けて「当社の布団は完全防ダニの布団です。」「月々3万円のクレジットを組めます」などと言って執拗に勧めてきたので,私も心配になり,ついつい100万円もする布団を36回払いのクレジット(個別式クレジット契約)で買ってしまいました。
   しかし,その後家族に話したところ,高すぎると怒られてしまいました。でもすでにクレジットを組んでしまいましたし,布団も受け取っているのですが,どうしたらいいでしょうか。


ここで、私は、資本1法案を支払うことができます

このように,業者が営業所以外で行う販売行為を訪問販売といい,特定商取引法の適用があります。
   訪問販売においては,法定の書面(契約内容やクーリングオフについての記載など)を受け取った日から起算して8日以内であればクーリング・オフが可能です(受け取った日を1日と計算しますので注意してください)。クーリングオフは,書面で契約解除の意思表示を販売業者及びクレジット会社に対して行います。8日以内に「発信」すればよく,業者やクレジット会社へ届くのが9日以降でもかまいません。書面については,送った日や内容についても証明できるよう,内容証明郵便で送った方がよいでしょう。

仮に書面を受け取ってから9日を過ぎてしまった場合ですが、業者の渡した書面を確認すると、法や省令で定められた記載事項が記載されていなかったりする場合があります。記載不備や虚偽の記載のある場合は「書面」を交付したことにはなりませんので、書面の内容によってはクーリングオフの期間が経過していない可能性があります。

また、業者は「お宅の布団はダニの巣になっています」「このままでは体のあちこちに不快な症状が出て、最後には病気になってしまいます」などと説明をしていますが、いったいどのような病気になるのかもよく分かりませんし、そのような実証データなどもないと思われます。にもかかわらず、あたかも今の布団のままでは病気になってしまうなどと説明することは、「契約締結の必要性に関する事情」について不実の告知をしたとして、特定商取引法の不実告知による取消が認められると考えられます。
さらに、業者は、「当社の布団は完全防ダニの布団です」と自社の布団が特に品質が優れているかのように説明していますが、このような品質に関する事項についての説明が虚偽であった場合は、消費者契約法の不実告知による取消が認められると考えられます。

そして、実際に契約を取り消した場合は、クレジット会社に対しても契約の取消を理由に支払を拒絶することができます(割賦販売法。ただし、クレジット会社へ支払の拒絶をする場合は、契約が2か月以上の期間にわたり3回以上(なお,法改正により平成21年12月までには「3回以上」の要件は廃止されます。)に分割して弁済する場合であることなど、一定の要件があります)。

なお、業者は「布団の点検」と称して最後には布団を売りつけていますが、訪問販売では契約の勧誘に先立って勧誘目的や商品名等を告げなければならないとされていますので、この業者の行為は特定商取引法に違反します。このような業者にはくれぐれも注意してください。

 

相続に関する問題

先日、父が死亡しました。相続人は、母と兄、そして弟である私の3人で遺言はないようです。
父の遺産は、自宅である土地・建物(価値は、5000万円)と、預貯金5000万円です。
法律上どのような遺産分割をすればいいのでしょうか。

まず、預貯金については、最高裁判所は、遺産分割等を経ることなく当然に法定相続分によって分割されるという考え方を取っています。
そこで、預貯金のうち、2500万円は母親に、1250万円ずつをあなた方兄弟が取得していることになります(但し、相続人間で協議して別の定めをすることは可能です。)。

次に土地・建物ですが、法定相続分は預貯金と同様です。
もっとも、母親だけが住んでいるなどの事情がある場合には、母親が相続するという遺産分割協議を行うこともあり得ることだと思います。法定相続分どおりに遺産分割しなければならないというものではありませんので、相続人間で合意ができれば、母親だけに相続させるような方法もあるでしょう。

土地・建物について法定相続分どおり分割するとすれば、母親2分の1、子供ら4分の1ずつという共有名義にするか、土地・建物を売却し、売却代金の2分の1を母親に、4分の1を子供らに分割することもあり得ます。

 

 

先日、父が死亡しました。既に母親が死亡しており、子供3人が相続人です。
遺言はありません。
次男は、父親の生前にマンション購入資金として500万円の贈与を受け、三男は事業資金として300万円の贈与を受けています。
父親の遺産は、3000万円であった場合に、それぞれ3分の1ずつの相続だとすると贈与等を受けていない私にとって不公平だと思いますが、そういうものなのでしょうか。

確かに、法定相続分はそれぞれ3分の1ずつですから、子供がそれぞれ1000万円ずつ取得することになり、次男はそれに加えて500万円、三男は400万円の利益を受けることになりそうです。

しかし、民法はそういった場合の不公平を是正するために、共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受けたり、生計の資本として贈与を受けた者があるときは(、を特別受益といいます。)、相続発生時の財産の価額に、遺贈もしくは贈与された財産の価額を相続財産とみなした上で(みなし相続財産)、相続分の算定を行うことを定めています(民法903条)。

従って、相続時の財産3000万円に、生前贈与された額である900万円を合計した3900万円が、みなし相続財産となります。その3分の1が、相続分となりますので、各人の相続分は1300万円となり、実際の取得額は以下のとおりです。

もっとも、被相続人が持ち戻しを免除するような意思表示をしていた場合には、その意思表示は遺留分を侵害しない限度で有効とされますし、相続人間で合意が得られれば法定相続と異なる遺産分割を行うことは可能です。

長男

1300万円

次男 1300万円−500万円(生前贈与の額)

800万円

三男 1300万円−400万円(生前贈与の額)

900万円

 

刑事事件関係

22歳になる息子が逮捕されました。詳しくは分かりませんが、自宅に来た警察官によれば、覚せい剤取締法違反ということです。
今後、息子についてどのような手続きが行われるのでしょうか。○○警察署にいるということですが、面会や差入れはできるのでしょうか。

刑事事件の一般的な流れを示すと以下のような流れになります。
捜査段階において、息子さんは逮捕、勾留され○○警察署に留置され、警察官や検察官から取調を受けます。
警察官は、取調の他にも、引き当たり捜査といって、犯行現場の確認をするような作業を行います。また、覚せい剤の自己使用事案であれば、息子さんの尿から覚せい剤物質であるフェニルメチルアミノプロパン塩類が検出されるかという鑑定を行います。

捜査の後に起訴された場合には、正式な裁判を受けることになります。
覚せい剤の自己使用事案で、使用した事実を認めている場合、通常審理は1回で終了し、次回に判決が言い渡されます。否認していたり、覚せい剤でも共犯者多数の密輸事案ですと裁判も長くかかることが一般的です。

なお、面会については、「接見禁止」という決定がなされていなければ面会することができます。面会日時ですが、警察署でも拘置所でも、平日の午前8時30分〜午前11時30分、午後13時〜16時30分に面会が可能ですが、捜査の都合や被疑者・被告人の入浴日や健康診断の日は、面会できない場合もありますので注意してください。

面会できない場合でも差入れは可能です。もっとも一定の物品については、警察署や拘置所指定の業者からの購入を義務づけられている場合が多いので、差入たい物品が差入可能かどうかは、警察署の留置管理係等に事前に問い合わせを行うほうが望ましいと思います。

【捜査段階】

逮捕

勾留

勾留決定されると基本的には10日間、警察署等に留置される
(勾留延長 延長された場合、さらに10日間、警察署等に留置される )
軽微な事案、争いのない事案等については、延長をせずに、起訴・不起訴処分が決定されることもある

 

 

息子が覚せい剤取締法違反で、起訴されて裁判中なのですが、今後、刑務所に行くことになるのでしょうか。
また、祖母が危篤なのですが、息子は祖母のお見舞いのために現在留置されている○○警察署から出てくることは可能でしょうか。考えたくはありませんが、祖母が亡くなった場合に、葬式に立ち会うことはできるのでしょうか。

覚せい剤取締法違反といっても、自分で使ったのか(自己使用事案)、それとも密輸(密輸事案)したのかによって、法定刑の重さは違っています。自己使用事案では法定刑は10年以下の懲役刑ですが、密輸事案ですと最も重い刑は無期懲役刑です。

また、初犯なのか、再犯なのかによって刑も変わってきます。覚せい剤の自己使用事案で、初犯の場合には、執行猶予付きの判決が多いです。覚せい剤の使用が2回目、3回目であれば基本的には実刑判決が多いので刑務所に行く可能性は高いと思われます。また密輸事案も基本的には実刑判決が多く、その果たした役割によっても量刑は異なりますが、基本的には数百グラムの密輸事案でも5年以上の厳しい判決であることが多いですし、1キロを超える密輸事案では、10年を超える実刑判決が出される可能性も覚悟しておいたほうがいいと思います。

起訴後、裁判所が息子さんについて保釈を許可した場合に、保釈金を納付すれば、○○警察署から出ることができますので、お見舞いや葬式等に立ち会うことは可能です。 また、保釈ではなく、特定の目的を達成するために短期間、留置施設から外に出ることが許される勾留執行停止制度もあります。

いずれにせよ、事案の軽重と犯歴に加え、息子さんと祖母の関係等を具体的に裁判官に説明し、理解を得ることができれば、保釈や勾留執行停止を求めることができると思いますが、初犯の自己使用事案であれば可能性はありますが、密輸事案等で長期の刑が予想される場合ですと保釈も勾留執行停止も極めて難しいと思います。

会社の破産・再生の問題

私は規模の小さい工務店を営業しています。ここ数年,会社は赤字が続き,金融機関からの負債の返済も延滞気味ですし,資金繰りが破綻しかけています。どうしたらいいでしょうか。

いわゆるリストラを実施し,赤字が黒字に転換できる場合はそれが理想です。また,金融機関の返済条件を緩和してもらうだけであれば,金融機関と協議して返済条件の緩和(リスケジュール)が認められることがあります。
   しかし,中核となる事業自体が不採算であったり,将来の展望が全く見えない場合には,「破産」手続を選択することもあり得ると思います(「会社の破産」については次のQ&Aをご参照下さい。)。
   他方,事業自体は,収益を上げている場合や,何らかの原因で生じた金融機関の負債が多少軽減されば黒字化できるような場合は,企業の「再生」に向けた手続きを検討することになります。
   裁判所を利用した法的再建手続としては,「民事再生」,「会社更生」手続きがあります。裁判所が関与する分,公平で中立的な手続きですが,他方,裁判所に納付する予納金が比較的高額で,かつ全ての債権者を対象に手続が進むので,取引先等にも影響してくることになります。
   私的な再建手続きとしては,メインバンクの協力を得て行う「私的整理ガイドライン」に基づくものや,中小企業再生支援協議会(*),事業再生ADRの利用なども考えられます。これらの方法は,法的再建手続と比較した場合には,コストが低額なことが多く,また特定の債権者のみを対象にできるので取引先への影響が少ない手続ですが,再建プランに対して関係者の全員一致が必要となりますので,一部の債権者が同意しない場合には,再建計画が不成立になってしまいます。
   いずれにしても,事業の再建が可能か否かについては,事業に関する評価だけでなく,会計・税務・法務など幅広い検討が必要なことが多いので,専門家に相談をすることをお勧めします。

*中小企業庁 「経営サポート再生支援」
    http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/saisei/index.html

私が経営している会社が破産したらどうなるでしょう。従業員には給料の未払いがありますが,その点はどうなるでしょうか。

裁判所に破産手続を申し立て,「破産手続開始決定」がなされると,破産手続が開始します。
   会社に関する管理処分権は,裁判所が選任する破産管財人がもつことになります。

  破産管財人は,様々な清算業務(財産の換価,負債の調査,契約関係の処理等)を行い,最終的に破産会社の資産等の売却によりお金がある場合には,債権者に対して配当を行い,破産の手続は終了します。もっとも,税金等の滞納がある場合には,一般の債権者に先立って,税金の弁済を行わなければならず,また,そもそも資産が少ない会社も多いので配当が可能なケースは多くありません。
   従業員の給料は,破産法上,破産手続開始前3ヶ月間分は財団債権となり一般の債権者に先立って弁済を受けることができますが,破産した会社に全く財産がない場合は,破産した会社から弁済を受けることはできません。そのような場合でも,独立行政法人労働者健康福祉機構による立替払制度(*)を利用して,給料の8割の立替払を受けることができることがあります。

 * 労働者健康福祉機構
  http://www.rofuku.go.jp/

私は,会社の代表者で,会社の負債の連帯保証債務をしていますが,会社が破産した場合に,どうなりますか。自宅についても○○銀行の抵当権が設定されているのですが,今後,自宅に住むことは可能でしょうか。

会社が破産した場合には,債権者から連帯保証債務の履行を求められることになります。収入と負債の額等に応じて,任意整理・個人再生・破産手続の利用が考えられます(「借金の問題」に関するQ&Aをご参照下さい。)。一般的には,会社が破産する場合には,一時的に職も失う上に,連帯保証債務も多額になることが多く,代表者等の役員も破産手続を選択することが多いと思われます。
   自宅に会社の負債の担保として抵当権が設定されている場合,負債の返済ができなければ,○○銀行から競売の申立がなされることになります。
   競売をいつ申立てるかは,金融機関によっても対応が異なります。競売手続が順調に進むと,概ね申立から半年程度で,不動産が売却されることが多いです。競売により売却され代金納付がなされると,その不動産はあなたではなく,購入した人(競落人)の所有物となりますので,購入した人から借りるか買い戻すことができなければ,出て行くしかありません。
   競売については,時間もかかるし,売却の値段が市場価格よりも低い場合があるので,通常の売買で不動産を売却することもあります(一般に「任意売却」といいます。)。もっとも,任意の売却ですから,競売と異なり,あなたが売却することに同意しなければ売却が実施できませんので,売買代金の額,立退時期,引越費用がもらえるのか否か等の条件を検討し,任意売却に応じるかどうか判断することになります。

取引先の会社が破産しました。私の会社が取引先に対して有する売掛金はどうなるでしょうか。また,民事再生の場合はどうでしょうか。


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破産手続が開始したり,再生手続が開始すると,それまでに発生した売掛金については,強制的に回収を行うことができない状況になります。そこで,債権者としては,債権者集会で情報収集をしたり,債権届出を行うことになります。再生手続の場合には,債務者から「再生計画案」が提示されますので,それについて同意するかしないかの判断も行うことになります。

 会社が破産した場合,破産管財人が倒産会社の資産の処分等を行い配当原資があれば,配当を受けることができます。配当を受けるためには,破産債権の届出を行うことが必要ですから,裁判所から送られてくる書式を利用して,届出を行って下さい(なお,破産した会社が,あなたの債権を一覧表に載せていない場合には,書式は送られてきませんので注意して下さい。)。
   もっとも,会社に十分な資産がない場合には,配当がなく,その場合には回収をすることはできません。
   民事再生の場合も再生債権の届出を行い,再生計画案に従った弁済を受けることになります。民事再生の場合,弁済が全くなされないということはありませんが,少額債権以外は一定割合に減額されることになりますので売掛金全額の回収は困難だと思われます。
   民事再生の場合は,取引先が事業を存続させることもあります。再生手続後も取引を継続することになるのであれば,過去の分はともかく,再生手続申立後の取引に関してどのような決済を行うのか,債権者説明会や個別に確認した上で取引を行うことになると思います。

被害者参加制度等

被害者参加制度とは何ですか?

犯罪の被害に遭われた方及び遺族の方(詳細はQ3をご覧ください)が,一定の条件の下で,加害者とされる被告人の刑事裁判に参加して,その被告人に質問をしたり,法廷で意見を述べたりすることができる制度です。
  この制度の大きな特徴として,被害者の方やご遺族の方自身が,法廷の中に入って(一般には検察官の横に着席する等の対応になると思われます。)、証人や被告人に対して質問をしたり、意見を述べたりできるという点が挙げられます(この制度ができる前は傍聴席にしか座れませんでした。)。また、被害者の方が自分のサポートをしてくれる弁護士を選び,自分の代わりに,又は自分と一緒に刑事裁判に関わってもらうことができるという点も挙げられます。なお、この弁護士の選任については、自費で依頼されることも可能ですし、一定の条件を満たせば国選弁護士を法テラスを通じて選任してもらうことも可能です。
  平成19年に制定された「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」によってこの制度が作られました。法律の題名から明らかなとおり,犯罪被害者の保護を図ることを目的としています。この法律は,平成20年12月1日から施行されました。その後,幾度かニュースでも実施報告が伝えられています。

どんな事件でも被害者は裁判に参加できるのですか?

殺人,傷害致死,強制わいせつ,自動車運転過失致死傷など,一定の犯罪に限られています(刑事訴訟法316条の33)。

参加できる被害者の範囲は?

被害者本人,その法定代理人(被害者が未成年者である場合の両親など)が参加できます。また,被害者本人が死亡した場合又は心身に重大な故障がある場合には,被害者本人が参加できないか参加が困難なので,本人に代わって,本人の配偶者,直系の親族,兄弟姉妹も参加できます。もっとも,参加には裁判所の許可が必要ですので,これらの方々全員で法廷に入れるというわけではなく,代表の方に入って頂くという運用になると思われます。
  なお、被害者の裁判参加は強制ではありません。望む場合に参加「できる」という権利です。したがって、参加をしないことも一向に構いませんし、傍聴席から見るだけという対応でも構いません。要は、被害者の方の意向に応じて選択の幅が広がったということです。

裁判に参加するというのは,具体的には何ができるのですか?

これまでの犯罪被害者の方も,刑事裁判に参加してきました。もっとも,参加といってもこれまでは傍聴席で裁判を傍聴した上で,場合によっては被害に遭った心境等について意見を述べることができる程度でした。
  しかし,今回の被害者参加制度ができたことにより,実際に法廷内(傍聴席ではなく,法廷の柵の中(検察官の隣の席など))で裁判に参加できるほか,次のようなことが可能になりました(但しいずれも裁判所の許可が必要です。)。また,これらのことを代理人として選任した弁護士に行わせることもできる点も,大きな変化です。
  @証人への尋問(刑事訴訟法316条の36)
   情状に関する事項について,証人の供述の証明力を争うために必要な事項について,証人の尋問をすることができます。例えば,被告人の親族が,証人として出頭して,今後被告人の監督をしっかり行うと証言した場合に,それが本当かどうかを確かめる尋問ができるというわけです。
   ただし,犯罪事実に関する事項について尋問することはできません。
  A被告人への質問(同法316条の37)
   被害者参加人の方が意見を陳述するために必要があると認められる場合に,被告人に対して,直接質問をすることができます。
  B事実又は法律の適用についての意見の陳述(同法316条の38)
   被害の心情だけではなく,事実や法律の適用についての意見も陳述できることになりました。検察官が犯罪事実として特定した事実の範囲内でなければならないという制限がありますが,犯罪事実や刑の軽重を判断する理由となる事実を主張し,どのように法律を適用すべきかの意見を述べることができるようになりました。具体的には,いままで検察官が行ってきた「求刑」という手続(例えば被告人を懲役5年にすべきだという意見)と類似するような法適用の意見を被害者参加人が独立して行うことができます。
  ※これまでと同様,被害に関する心情その他の被告事件に関する意見の陳述(同法292条の2)も可能です。

犯罪被害に遭った場合,どのような支援を受けられますか?どのように被害が回復されますか?

犯罪被害にも様々なものがあります。財産を盗まれるという被害(財産的被害),怪我を負わされるという被害(身体的被害),心を傷つけられるという被害(精神的被害)などが考えられ,その内容や程度は人によって,また事件によって異なります。
  身体的被害については,一次的には医療機関等で治療を受けることが第一です。かかった治療費や交通費などは,財産的損害の一部として加害者に損害賠償を請求することができます。
  精神的被害については,加害者から謝罪を受けたり,家族や友人・知人のサポートを得たり,時間が経過したりと,様々な要素により徐々に回復してゆくものだと思います。犯罪被害者の支援を行っているNPO法人などもあります。
  この精神的被害についても,慰謝料として損害賠償請求の対象となります。

犯罪による財産的被害等を回復するために,どのような方法がありますか。

一般に,次のような方法が考えられます。
@任意の交渉(示談)
A刑事和解
B損害賠償命令制度
C通常訴訟
D犯罪被害者等給付金の請求

「@任意の交渉(示談)」について説明して下さい。

犯罪被害の回復について,もっとも基本的な方法は,加害者と直接交渉して,賠償金を支払うという約束をさせ,それを履行させるという方法です。具体的には,犯罪被害の賠償に関する和解契約を締結し,契約を約束通り守らせ,賠償金を支払わせることとなります。
  この方法がとられる場合として,一般には加害者の代理人弁護士等から示談の提案を受けて,これに応じる場合が多いでしょう。この方法のメリットは,費用がかからないか比較的少額で済むことや,時間的心理的負担が比較的少ないという点が挙げられます。デメリットとしては,加害者が和解しない(賠償を約束しない)と成立しないことや,約束をしても実際に支払わない場合に強制的に支払わせることができない(支払わせるためには別途裁判等が必要になる)ことです。

「A刑事和解」について説明して下さい。

刑事和解とは、被告人と被害者等が共同してその合意の内容を刑事裁判の公判調書に記載することを求め,それが記載されたときには,その記載に基づいて強制執行をすることができるという制度です。
  「@任意の交渉」のデメリットの一部を解消するために有意義な制度です。加害者が和解に応じない場合には利用できませんが,応じる場合には、例えば後日加害者が和解の内容に従った損害賠償金を支払わない場合に,加害者の財産に強制執行をすることが可能となります。
  具体的な方法ですが,加害者の刑事裁判が行われている間に,加害者との間で損害賠償に関する合意がある場合に,その合意の内容を刑事裁判の公判調書(裁判期日で行われた手続き等を記載する書面)に記載するよう書面で申し立てます。そして,その合意が公判調書に記載されると,その公判調書の記載は「裁判上の和解と同一の効力を有する」とされています(「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(通称:犯罪被害者等保護法)」13条4項)。これにより,加害者がその合意内容に従った損害賠償金を支払わない場合に,加害者の財産に強制執行をすることが可能となります。

「B損害賠償命令制度」とは何ですか?

加害者本人が損害賠償に関する和解に応じない場合等,上記@Aの方法では被害の回復を図れない場合には,裁判手続により損害を立証して,判決を受け,これに基づいて加害者の財産に強制執行をすることが考えられます。
  もっとも,通常の裁判手続は,訴状を作成したり,犯罪行為の内容や損害の内容・額等を自ら立証しなければならず,ただでさえ犯罪被害により多大な身体的・精神的苦痛を被った被害者の方やご遺族の方には大きな負担となっていました。他方,刑事裁判においては,加害者による犯罪行為のあったことの立証に検察官が成功した場合,その立証を利用して損害賠償を請求することができれば被害者の方の負担は大幅に軽減されます。
  そこで,犯罪被害者等保護法では,損害賠償命令制度を設けており,この制度により通常の裁判手続と同じ効果を受けられる場合があります。

どんな場合に損害賠償命令制度を利用できますか?

この制度を利用するためには,故意の犯罪行為により人を死傷させた事件等一定の事件により被害を受けた場合であることが必要です。そして,その事件についての刑事裁判が終結する前に損害賠償命令の申立をする必要があります。

損害賠償命令制度の手続と効果を教えて下さい。

損害賠償命令の申立をすると,刑事裁判終了後に,損害賠償について審理する期日を別に設けます。期日は4回以内とされています(初回の期日は、刑事裁判の判決の日に行われることになっています。)。
  この審理により,裁判所は加害者に対して適正と考える損害賠償金の支払いを命ずることができます。加害者に対してこの命令が告知された日から2週間が経過して命令が確定すると,この命令により加害者の財産に強制執行することが可能となります。
  もっとも,加害者が命令の告知を受けた後,異議の申立をすると,命令は確定せず,通常の裁判手続に移行することとなります。

「C通常訴訟」について教えて下さい。

上記@ABの方法で被害の回復を受けられない場合には,通常の裁判手続を利用して,加害者に対する損害賠償請求を行うこともできます。前述のとおりこの請求に当たっては犯罪行為や損害額等を被害者の側で立証しなければならない点で負担は大きくなります。もっとも,加害者に対して損害賠償責任(民事責任)をしっかりと追及し,責任を負わせることは大切なことです。被害者の方が犯罪被害から財産的・精神的に回復するためにはこの点の責任追及を果たすことが必要な場合もあるでしょう。
  自ら裁判を行うことは負担も大きいため,弁護士等に相談して,依頼することが多くの場合必要となると思われます。

「D犯罪被害者等給付金の請求」について説明して下さい。

前述した@〜Cの方法は,いずれも加害者本人に対して損害賠償を請求して,支払いを受ける方法です。もっとも,加害者本人に損害を賠償する財産がない場合には,賠償金を支払わせることができないこともあります。
  そのような場合に,犯罪被害者等を保護するために,「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(通称:犯給法)」という法律があり,この法律に基づいて一定の被害回復を受けうる場合があります。

犯給法による被害回復を受けられるのは,どんな場合ですか

犯給法で被害回復を受けられるのは,「日本国内…において行われた人の生命又は身体を害する罪にあたる行為」によって「死亡,重傷病又は障害」を受けた場合です。
  支給される給付金としては,@遺族給付金(被害者が死亡したとき),A重傷病給付金,B障害給付金があります。
  支給される金額ですが,@遺族給付金が最大で約3000万円,B障害給付金が最大で約4000万円とされています。
  この給付を受けるためには,細かい条件が多数ありますので,弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

どのような犯罪であったのか調査したい場合に,どのような方法がありますか

まずは,警察官・検察官から説明を受けることが考えられます。
  犯罪の被害に遭った場合,被害者として警察官や検察官から事情を聞かれることになります。被害者が死亡した場合は,被害者の生前の様子等について遺族の方が事情を聞かれることもあります。このような事情聴取の際に,事件の概要や加害者の言い分等について一定の範囲で警察官や検察官から説明を受けられる場合が多いでしょう。

他に方法はありませんか?

次に考えられるのは,刑事裁判の傍聴です。ニュースなどでも,被害者の遺族が裁判の感想を述べているシーンなどが放送されることがありますが,あれは裁判を傍聴して,その感想を述べていることが多いと思われます。
  刑事裁判は公開の法廷で行われますので,被害者又はその遺族の方も傍聴することができます。また、先に述べた被害者参加制度を利用して刑事裁判に参加した場合も、同様に法廷でのやりとりを通じて、犯罪の内容等を知ることができます。
  刑事裁判では,起訴状(検察官の主張する犯罪事実が記載された書面)が読み上げられます。また,検察官が証明しようとする事実が,冒頭陳述において明らかにされます。さらに,証拠調べの中で,裁判の証拠書類が読み上げられたり,証人の尋問や,加害者の質問が行われたりします。これらを傍聴することで,さらに事件の内容や加害者の言い分を詳しく知ることができます。


裁判を傍聴したのですが,検察官や弁護人の口調が早くて,読み上げている書類の内容が分かりませんでした。何か方法はありませんか?

残念ながら,検察官や弁護人の中には,ものすごく早口だったり,ぼそぼそ話したりして,内容を聞き取れない方もいます。
   そのような場合には,読み上げられた書類自体を目にしたいと思うのは自然なことです。
   現在の法制度では,刑事裁判が始まった後(法律上「第1回公判期日後」とされています。),犯罪被害者が刑事裁判の記録を閲覧し,謄写(コピー)することが認められる場合があります(犯罪被害者等保護法3条)。
  被害者等が閲覧・謄写を申し出た場合,裁判所は「閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き」閲覧・謄写を許すこととされています。
  また,検察庁では,第1回公判期日前であっても,刑事記録の閲覧等を認める運用を努めるものとされています(2008年9月5日付依命通達)。具体的には、被害者参加制度の対象事件(Q3参照)について、被害者等から「検察官が当該被告事件について証拠調べ請求をすることとしている証拠の開示を求められた場合は、関係者の名誉等を害するおそれや捜査・公判に支障を及ぼすおそれの有無・程度等を考慮して相当でないと認められる場合を除き、当該証拠の閲覧を認めるなど、弾力的な運用に努める」とされています。

裁判員制度

裁判員制度とは,どんな制度ですか?

裁判員制度とは,国民のみなさんに裁判員として刑事裁判に参加してもらい,被告人が有罪かどうか,有罪の場合どのような刑を科すのかを決めてもらう制度です。
  裁判員制度の対象事件では,原則として,裁判官3名,裁判員6名,合計9人で裁判をすることになります。

どんな事件について裁判を担当するのですか?

殺人,傷害致死,強盗致死傷,危険運転致死,現住建造物等放火などの事件です。また,覚せい剤の密輸事件も対象となります。千葉県では,この覚せい剤の密輸事件が他の都道府県と比較すると多く審理されることになると思われます。

裁判員はどのように選ばれるのですか?

裁判員に選ばれるためには,3つのステップがあります。
   @裁判員候補者名簿に載ること(二百数十人に一人)
   A事件ごとの候補者に選ばれること(1事件五十名くらい)
   B事件の裁判員に選ばれること(1事件六名+補充裁判員若干)
   ※括弧内は千葉県を例にした目安です。

「@裁判員候補者名簿に載ること」について説明して下さい。

名簿に載ると「名簿登載通知」が郵送されてきます。その通知が来た場合,翌年度(4月1日〜3月31日)の裁判員に選ばれる可能性があります。名簿登載通知には調査票が同封されているので,各調査項目に記載して返送します。これによって,例えば1年を通じて辞退事由がある人(例:法律専門職,警察官等)については,裁判員候補者から外れます。

「A事件ごとの候補者に選ばれること」について説明して下さい。

翌年度になり,裁判員裁判の対象事件が起訴された後,裁判期日が決まると,裁判所はその事件の裁判員候補者を選定します。そして,候補者に「呼出状」を送付します。この呼出状が来た場合,裁判所に出頭する必要があります。そして,選任手続を受けますが,辞退事由がある場合などはこの選任手続の際に辞退が認められる場合もあります(例:重病で出頭できない,介護が必要な家族がいて手を離せない等)。

「B事件の裁判員に選ばれること」について説明して下さい。

裁判所に出頭して,選任手続を行った結果,呼び出された約50名のうち,6名が裁判員に選ばれます。また若干の補充裁判員も選ばれます。

裁判員になれないのはどんな場合ですか?

欠格事由,就職禁止事由,不適格事由がある場合には,裁判員になれません。

欠格事由とは,どんな事由ですか

裁判員法14条に規定されています。次のような事由が欠格事由とされています。
・国家公務員になる資格のない人(成年被後見人,懲戒免職処分を受けて2年を経過しない人)
・義務教育を終了していない人(ただし、義務教育を終了した者と同等以上の学識を有する者は除きます。)
・禁錮以上の刑に処せられたことがある人
・心身の故障のため裁判員の職務の遂行に著しい支障がある人

就職禁止事由とは,どんな事由ですか

裁判員法15条に規定されています。次のような事由が就職禁止事由とされています。
・国会議員,国務大臣,国の行政機関の幹部職員
・都道府県知事,市町村長
・司法関係者(裁判官,検察官,弁護士,司法修習生,弁理士,司法書士,警察官等)
・大学の法律学の教授
・自衛官
・禁錮以上の刑に当たる罪につき起訴され、その被告事件の終結に至らない者
・逮捕又は勾留されている者

不適格事由とは,どんな事由ですか

裁判員法17条及び18条に規定されています。次のような事由が不適格事由とされています。
・被告人又は被害者,その親族,同居人等
・その事件の告発等をした人
・その事件の関係者(代理人,弁護人,担当検察官等)
・裁判所がこの法律の定めるところにより不公平な裁判をするおそれがあると認めた人

裁判員になることを辞退できるのはどんな場合ですか?

以下のような辞退事由がある場合です(裁判員法16条等)。
・70歳以上の人
・地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)
・学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)
・過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった人
・過去三年以内に選任予定裁判員であった人
・過去一年以内に裁判員候補者として裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある人
・過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった人

その他に辞退できる場合はありませんか?

次に挙げる事情があって、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な方も,辞退が認められるとされています。
  @重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
  A介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
  Bその従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
  C父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。
  D妊娠中であること又は出産の日から八週間を経過していないこと。
  E介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある親族(同居の親族を除く。)又は親族以外の同居人であって自らが継続的に介護又は養育を行っているものの介護又は養育を行う必要があること。
  F配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、直系の親族若しくは兄弟姉妹又はこれらの者以外の同居人が重い疾病又は傷害の治療を受ける場合において、その治療に伴い必要と認められる通院、入院又は退院に自らが付き添う必要があること。
  G妻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は子が出産する場合において、その出産に伴い必要と認められる入院若しくは退院に自らが付き添い、又は出産に自らが立ち会う必要があること。
  H住所又は居所が裁判所の管轄区域外の遠隔地にあり、裁判所に出頭することが困難であること。
  I前各号に掲げるもののほか、裁判員の職務を行い、又は裁判員候補者として法第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することにより、自己又は第三者に身体上、精神上又は経済上の重大な不利益が生ずると認めるに足りる相当の理由があること。

裁判員に選ばれたら何をするのですか?

裁判員法の定める裁判員の権限は,@事実の認定,A法令の適用,B刑の量定です(裁判員法6条)。

「@事実の認定」とは,何ですか

過去にどんな事実があったのかを証拠を見たり,聞いたりして,判断して頂くことです。裁判において,検察官は「被告人が犯人だ」と主張します。そして,検察官はそれが「常識に従って判断をして間違いない」というレベルまで証明しなければなりません。もし,被告人が犯人かどうか疑問がある(疑問が残る)のであれば,無罪となります。
  すなわち、裁判員の方には、証拠を見たり聞いたりして,「被告人が犯罪行為をしたことが間違いない」かどうかを判断して頂くことになります。

「A法令の適用」とは,何ですか

上記@で認定した事実に基づいて,その事実に法令をあてはめる作業です。どんな法令があるか,その法令をどんな場合に適用すべきか(法令の解釈)は,裁判官(時には検察官・弁護人が法廷で意見を述べる場合もあるでしょう。)から指摘や説明があります。その指摘や説明に従って,その事件にどの法令を適用すべきかを判断することになります。
  例えば,被告人が通行人のハンドバッグを強引にひったくってその人に怪我をさせたという事実が認められたとします。ところで,刑法という法律の解釈により,強盗罪という罪が成立するためには,「犯人が暴行・脅迫によって被害者の反抗を抑圧して(肉体的あるいは精神的に抵抗できない状態にさせて)財産を奪った」ことが必要とされています。そこで,強引にひったくったという行為が「被害者の反抗を抑圧して奪った」といえるかどうかを判断することになります。

「B刑の量定」とは,何ですか

被告人が有罪であると判断した場合に,その刑の種類や重さを決めることです。裁判員裁判の対象事件については,死刑,懲役刑,禁錮刑などの刑が定められています。このうちどの刑を選択するかを決め,さらに懲役刑であれば無期懲役(期間を定めない懲役刑)にするのか,有期懲役(「懲役10年」というように刑の期間を定めて言い渡す懲役刑)にするのか,有期懲役にするなら何年の刑期にするのかなどを決めて頂くことになります。

法律のことなど全く分からないのですが,裁判員になって意味があるのでしょうか。

もちろんあります。
  裁判では,過去にどのような事実があったのかを,証拠に基づいて判断していきます。証拠には,書類,写真,ビデオ映像,証言などがありますが,これらを見て,過去に何があったのかを推測するのです。また,書類に書いてあることが信用できるかどうか,証人が本当のことを言っているのかどうかもチェックする必要があります。
  例えば,事件を目撃したという証人が「被告人が被害者の顔面を右拳で殴るのを見ました。」と法廷で証言したとします。その証言が本当かどうかを判断するのに,法律の知識は必要ありません。その証言をした時の証人の態度を観察して,嘘を見破れるかも知れません。証人に目撃した時の状況(被告人との距離や雨が降っていたかどうかなど)を確認して,疑問がわくこともあるかも知れません。
  人が嘘を付いているかどうか,勘違いをしているかどうかを判断するのに法律の知識は関係ないのです。裁判官よりも皆さんの方が正しい結論を導く場合も当然あるでしょう。
  そのために,皆さんがそれぞれ持っている経験や感性をフルに活用して頂ければと思います。それこそが裁判員制度を行う意味だと考えます。

裁判員の守秘義務について説明して下さい。

裁判員は,「評議の秘密」等を「漏らしてはならない」という義務を負います(裁判員法70条)。
  具体的には,次のような点を漏らしてはならないことになります。
@評議の秘密…どのような評議の過程を経て結論に達したか,各裁判員や裁判官がどのような意見を述べたか,評決の際の多数決の数など
Aその他職務上知り得た秘密…裁判員の名前や住所,被害者等事件関係者のプライバシー情報
  他方,上記@A以外の事項,例えば,公開の法廷で見たり,聞いたりしたこと(読み上げられた証拠書類の内容,証人尋問の内容,判決の内容など)は,守秘義務を負わないものとされています。

裁判員・補充裁判員についてどんな罰則がありますか?

次のような罰則が定められています。なお,現在裁判員をしている方に限らず,過去に裁判員や補充裁判員を務めた方も以下の罰則の適用があるとされています。
・秘密漏示罪(評議の秘密その他職務上知り得た秘密を漏らしたとき)
  →6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金など
・収賄罪・加重収賄罪(いわゆる「賄賂」をもらった場合など)
  →1年以上の懲役など

裁判員候補者についてどんな罰則がありますか?

次のような罰則が定められています。
・質問票の虚偽記載
・質問への虚偽陳述
  →50万円以下の罰金又は30万円以下の過料
・質問への陳述拒否(正当な理由が無い場合)
  →30万円以下の過料
・裁判所への不出頭(正当な理由が無い場合)
  →10万円以下の過料

裁判員等を保護する罰則にはどんなものがありますか

次のような罰則があります。
・裁判員等に対する請託罪(裁判員に対してその職務に関し請託を行った場合)
・裁判員等に対する威迫罪(裁判員やその家族等を威迫した場合)
  →3年以下の懲役又は20万円以下の罰金など

 



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